現在、私達が慣れ親しんでいるお蕎麦のスタイルは、江戸時代後期の東京(江戸)でブームとなり定着したといわれています。
当時の江戸では、「粋」とよばれる身なりや振る舞いに対する美意識が形成されていました。
「粋」は当時の庶民生活の様々な場所で、もてはやされました、江戸っ子のマナーと言えるものかもしれません。
食事に関しても例外ではなく「粋」な食べ方が根付いていきました。
お蕎麦には現在も「粋」とされる食べ方が受け継がれている事をご存知の方も多いのではないかと思います。
今回は、そば職人の立場で一般的に知られているお蕎麦(ざるそば)の食べ方について、私の見解を含めご紹介させていただきたいと思います。
(あくまで私感ですので、反対意見等もあるかもしれませんが寛大な気持ちで受け流していただけると幸いです。)
お蕎麦本来の風味が感じられ、おすすめではありますが必須ではないというのが私の考えです。
まずは一口、何も付けずに食べたあと、お好みで塩をひとつまみ振りかけて食べるのもおすすめです。
特に十割そばや秋新など、本来の味が存分に楽しめるお蕎麦では是非、お試し頂きたいと思います。
お塩をひとつまみふりかけるのもおすすめです
こちらも必ずというわけではありませんが、東京では、一口ですすりきれるぐらいのお蕎麦を長さの1/3程度つゆにつけて食べる、というスタイルが定着しているようです。
一方、関西(特に京都)のつゆはしっかりと出汁をとって「あまったるく」仕上げてあり、たっぷりとつゆに付けて、出汁のうま味と蕎麦ののどごしを味わうという食べ方が一般的なように感じます。
おつゆは地域によって違いがあります。
勢いよくすすって食べる事で空気が程よく鼻に抜け、よりお蕎麦の香りが引き立つといわれています。
また、お蕎麦はのどごしも楽しみの一つです、「ズズッ」とすすって、のどごしを一緒に味わうのも一興かと思います。
麺類をすする音を不快に感じる方もいらっしゃいますので、TPOによっては好ましくない場合もあるのかもしれません。
「音を立てて食べる事がルール」というものではありませんので、楽しみ方の一つとして捉えていただければよいのではないかと思います。
薬味はわさびと葱が一般的です、当店では、わさび・おろし・白ネギをご用意しています。
薬味をつゆに入れては「いけない」というわけではなく、あくまで個人の楽しみ方次第だと思います。
ご自身が一番美味しいと感じる食べ方で召し上がってください。
薬味をつゆに入れずに、直接お蕎麦にのせていただく事で、つゆの状態が損なわれにくく、お蕎麦の味も引き立つと言われますが、つゆに直接薬味を入れて召し上がられるお客様がほとんどです。
大根おろしはお蕎麦の甘味を引き立てます。
いかがでしょうか?
ご紹介した食べ方は、理にかなったお蕎麦の楽しみ方だと思います。
しかし、お蕎麦にルールはなく「自由に、美味しく楽しむ事が一番」ではないでしょうか。
堅苦しくとらえるのではなく、楽しみ方の一つとして是非、お試しいただければと思います。
またお蕎麦を楽しんだ後は、熱々の「そば湯」をお出しします。
この「そば湯」にはお蕎麦の栄養素、ビタミンB1・B2やカリウム、ルチンなどが豊富に溶け出しています。
栄養の観点からも、是非、召し上がっていただきたいと思います。